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サーブのエントリーモデル |
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年産台数が十数万台というから、量産の乗用車メーカーとしては世界でも最小規模のメーカーといえるのが、サーブ。でも規模は小さいが航空機メーカーに由来するこだわりのあるクルマ作りで知られており、強く支持するユーザー層を持つメーカーでもある。
そのサーブのエントリーモデルとなるのが9-3で、先にセダンが販売されていたが、今回ステーションワゴンのスポーツエステートが追加された。セダンと同じプラットホームをベースに、リヤのオーバーハングを延長してラゲッジスペースを作ったモデルだ。
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搭載エンジンは本国ではディーゼルエンジンもあるが、日本仕様はガソリンエンジンのみの設定。3種類の異なるチューニングが施された直列4気筒2.0LのDOHCターボと、V型6気筒2.8LのDOHCターボの合計4機種がラインナップされる。トランスミッションは電子制御式の5速ATが基本で、V型6気筒エンジンのみ6速ATとなる。
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リヤエンドはホッケーのスティック |
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スポーツエステートという名前が示すように、単に使い勝手に優れたステーションワゴンではなく、スポーティなイメージのクルマに仕上げられているのがいかにもサーブらしいところ。角度のついたリヤエンドはホッケーのスティックをモチーフにした独特のデザインとされ、テールレンズのカバーは北欧の氷をイメージしたデザインが採用された。
インテリアに目を向けると、サーブの伝統ともいえるドライバー・オリエンテッドのインパネデザインが印象的。センターのつまみを動かすだけで360度自由に角度調整のできるエアコンのアウトレットやプッシュボタン式のドリンクホルダーなどもサーブならではのものといえる。キーシリンダーがセンターコンソールに設けられているのも飛行機に由来する安全思想を表現したものだ。
リヤのラゲッジスペースの床面にはサーブのアイデンティティを象徴する飛行機の形をしたハンドルが設けられ、これを操作することでフレキシブルな使い勝手が実現できる。
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走りもスポーティ |
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最初に試乗したのはロープレッシャーターボを搭載するアーク。発生する129kWのパワーは2.4Lエンジン級のもので、265N・mの最大トルクは2.5Lエンジンというか3.0Lエンジンに近いくらいの実力。最大トルクをわずか2200回転で発生するので、低速域からトルク感のあるゆったりした走りが得られる。アクセルを踏み込んでいったときの加速フィールも滑らかなもので、自然吸気エンジンにも似た素直な加速を実現する。
最上級グレードのエアロには2.8LのV6ターボが搭載される。荒れた路面でも角がとれた感じで、ゴツゴツ感を感じさせない乗り心地などがとても良い印象だ。
184kW(250ps)のパワーは動力性能的には余裕十分というか過剰なくらい。停止状態からでも思い切りアクセルを踏み込むと、一瞬だがトルクステアやホイールスピンを発生させた後、トラクションコントロールが作動して力強く加速していく。
気持ちの良いスポーティな走りが楽しめる。
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個性を求める人にオススメ |
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サーブは一般のユーザーに勧められないほど特殊なクルマではないが、実際に選ぶのはかなりのクルマ好きで通のユーザーに限られるのが実状だろう。ごく一般のユーザーがサーブを買い物リストに乗せる前に、メルセデス・ベンツもBMWもアウディもボルボも、とにかくいろいろなブランドがあるから、サーブにまで目が届くことは少ないと思う。
でもサーブの存在に気付いたユーザーなら一度はサーブに乗っても良い。そもそも輸入車に乗るのは、ほかのクルマとは違った差別化された個性的なクルマを選びたいというニーズによるものだから、そんな選択肢としてサーブは絶好の存在である。
9-3スポーツエステートでは2.0Lの低圧ターボを搭載し、428万円の価格が設定されたアークがお勧め。ベースグレードのリニアでも良いが、これだと装備がシンプルになりすぎる。走り志向のユーザーにはV6ターボのエアロがあるが、価格が一気に500万円台に乗ってしまうので、ちょっと厳しい。 |
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