日本名セルシオ=現地名LS400の完成と共にアメリカで創設をされてから16年。彼の地では、たちまちにしてメルセデス・ベンツやBMWなどと並ぶ押しも押されもしない一級の高級車ブランドとして認知をされた『レクサス』のプロジェクトが、いよいよ間もなく日本でも始動をする。かくもアメリカで上手く行ったのだから日本での成功も約束をされたようなもの……とそう考えるのは、しかし早計というものだ。何故ならばこのレクサスというブランド、アメリカでは大成功を収めたものの「その他の地域では決して成功をしているとは言えない」のも、また現状だからである。
確かにアメリカというのは世界最大の自動車マーケット。そこで成功を収めただけに「レクサスは勝者」という雰囲気が強く漂うのは当然かも知れない。しかし、クルマに限らず様々なプロダクツには即物的な評価を下す傾向の強いアメリカに対し、歴史や伝統などのストーリー性までを踏まえたより厳しい審美眼を備えるヨーロッパのマーケットでは、実は「まだまだ殆ど無名の存在」であるという事を見逃すわけには行かないだろう。
“より良いものをより安く”――これが、これまでの日本でのマスプロ製品全般にかかる常識であったと言って良いはず。けれども、レクサスが狙うのは“より良いものならより高くても”というスタンスであると言う。そして、そんな価格依存度の少ないセールスのやり方というのは、実はこれまでアメリカのレクサスでも行われて来なかった事を母体であるトヨタでは認めている。すなわち、日本で展開をしようというレクサスのプロジェクトは、「アメリカで行ってきた事の焼き直し」では決して無いというわけなのだ。
レクサスが日本のマーケットで狙うのは、オーナーに“幸福な時間”という無形のプレミアム性を提供しようという事柄。そして、現在では60カ国以上で展開済みというこれまでの世界のレクサス・チャンネルでも、これからは同様の考え方で臨みたいと言う。
そう、アメリカのマーケットに牽引をされて16歳を迎えた『レクサス』は、本来の生誕地である日本への導入を機に今一度大きく生まれ変わろうとしているのだ。そんな日本のレクサスはまずはオールニュー・モデルである『GS』と共にスタート。そして、その一ヵ月後には『IS』との二人三脚を開始しながら、来年のデビューと言われるフラッグシップ・サルーンの『LS』の誕生に備える事になる。
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