レクサスGSはこれまでのトヨタ・アリストのモデルチェンジ車……これから新ブランドとしてのイメージを構築しようというレクサスにとって、正直なところこう評されるのは決して嬉しい事ではないだろう。が、現実のクルマのポジショニングやそのスタイリングの雰囲気を目にすると、やはりどうしてもそう受け取られるのは避けられそうにない。実際、国外ですでにレクサス・チャンネルが展開をされてきた地域では、このクルマは紛れもなく「GSの新しいバージョン」という位置づけになるのだ。
4830×1820×1425mmというボディの3サイズは、これまでのアリストとほぼ同等という関係の持ち主。ただし、2850mmのホイールベースはプラスの50mmで、同時にリアのオーバーハングが50mmほど削られた事もプロポーション上のひとつの特徴となる。日本開業に先駆けてすでに開設されているインターネット上のオフィシャル・サイトでは、このモデルは“プレミアム・ツーリングサルーン”として紹介されている。こうして走りのダイナミズムが強調をされている点にも、やはり従来のアリストのキャラクターとの強い関連性が感じられる。
搭載される心臓は8気筒と6気筒の2タイプ。実はこれまでも海外向けのGSでは、すでに同様の展開が行われていた。ところが、8気筒エンジンを独占搭載する事でフラッグシップ・モデルらしさをアピールしようというセルシオのこれまでの戦略に遠慮(?)をしたためか、日本のアリストには結局最後まで8気筒エンジンは搭載されなかった。代わりに用意をされていたのが最高出力280psを誇るターボ付きの6気筒仕様。そして、日本ではこのモデルが“パワー・エリート”としてのアリストの人気を牽引してきたという経緯がある。それゆえに、そんな分かりやすい強烈加速力が持ち味だったアリストのキャラクターを、いかにレクサスの一員としてのGSに上手く昇華させるかもこれからのレクサス・プロジェクトの腕の見せ所だろう。
ところでレクサスGSの場合、よりスポーティなキャラクターを担う事になるのはむしろ排気量の少ない3.5リッター・エンジンを搭載する『GS350』の方というのが興味深い。300psを遥かに超える最高出力を生み出す心臓を積むこのモデルの加速感は、よりジェントルで高級感の漂う『GS430』のフィーリングよりも遥かに豪快にして軽快なのである。ただし、際立つ快適性を重視した感の強いシャシーの仕上がりとのバランスという観点からすれば、ぼくとしてはGS430の方により好感を覚える事になった。一方で、8気筒モデルでは来年新しい『LS』がデビューをすると、実際に今度はそちらとの棲み分けも課題になりそうだ。
南仏で開催された国際試乗会、そしてトヨタの北海道テストコースに用意をされていたGSは、まだ量産試作段階のモデルという事もあってか走りの質感のバラつきがやや大きめだった。が、そうした中で最も印象の良かったモデルが今後の“標準仕様”になると考えれば、200km/hレベルのスピードでも安定性に不足はないし静粛性も一級品と評す事の出来る水準にある。もちろん、レクサスのブランドを率いて行こうというモデルだけあって、内外装の質感は文句なしのレベル。装備の充実度の高さという点でも、当然ライバルに勝るとも劣らない。
メルセデス・ベンツ EクラスやBMW 5シリーズに対するレクサスGS最大の先進イメージというのは、様々な電子制御テクノロジーを複合的に活用する事で積極的な走りの安全度を手に入れようとしている部分に象徴されているとも言えそう。日本が得意とするこうした技術を前面に押し出すという戦略は、なるほどなかなか理にかなっていると受け取れるものである。
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