GSがアリストの後継モデルと認識されるのはやむを得ないとしても、このクルマだけは決して「アルテッツァの跡継ぎ」とは受け取って欲しくない――すべてのレクサス関係者が一様にそう願うに違いないのが今度の『IS』というモデル。確かに、日本でのアルテッツァは、これまで海外のレクサス拠点ではISという記号を名乗ってきた。が、そもそもこれまでのISは、実はレクサス・チャンネルへの投入を当初から想定して開発はされて来なかったという経緯の持ち主でもある。すなわち、今回日本のレクサス店からのリリースを踏まえ、初めてレクサスのクオリティを意識したクルマづくりが行われたのが新しいISと言える。こうなれば、冒頭述べたようにアルテッツァの後継車とは見て欲しくないという関係者の思いも当然だろう。
実際、ISのルックスにはもはやアルテッツァからのイメージの継承を連想させる部分は殆ど見当たらないと言っても良い。実は、従来型のIS(=アルテッツァ)のスタイリングは、日本車としては珍しくヨーロッパでも好評をもって迎えられたもの。しかし、トヨタではそれをレクサス・チャンネルに相応しいものとするために、敢えて従来からの流れは断ち切った事が分かる。「このクルマこそを、真に初代のISとして育てたい」という意欲と覚悟のほどが伝わって来る気がするものだ。
そんな新しいISのボディ3サイズは、4575×1795×1425mmと発表された。これは、直接のライバルとして挑戦を行うメルセデス・ベンツ
CクラスやBMW
3シリーズなどと遜色のないサイズを、熟考の末に採用したという印象が強い。全体に強いウエッジシェイプが効き、前輪位置が前出しされてフロントのオーバーハングが短いのはいかにも“プレミアム・スポーツセダン”を名乗るのに相応しいプロポーションという感触。Cピラーが後方まで尾を引き、それゆえにリアのデッキ部分が短い処理は「レクサスらしさ」を表現するひとつの手法としてGSにも用いられている。
インテリア各部の質感もアルテッツァのそれとは比較にならないほどに高められたこのクルマの走りのテイストは、想像以上、期待以上にスポーティなものだった。ステアリングを切り込んで行くとまるで自らの身体が旋回中心になったかのごとくノーズを動かすさまは、やはり自在なハンドリング感覚で定評のあるBMWの3シリーズと甲乙つけがたい印象だ。ただし、オプション設定になるとされる“スポーツシャシー”を採用したモデルの乗り味は、ダイレクトなハンドリング感覚こそ特筆レベルにあったものの、レクサスのブランドを名乗るには余りにもハード過ぎると感じられた。もっとも、今回テストをした各モデルはまだプロトタイプの時点のもの。このあたりの煮詰めがこれからいかに進められて行くかは、まだ楽しみという段階にあるわけだ。
動力性能は2.5リッター・エンジンを積むIS250でも「実用上は十二分」という印象。が、それでも新開発の3.5リッター・エンジンを積んだIS350のパワフルさを知ってしまうと、どうしても興味はそちらに移りがちとなる。アクセル・レスポンスもシャープで高回転域にかけてのパワーの伸び感も秀逸。さらにはそのサウンドもトヨタ製ユニットとは思えないほど(?)にゴキゲンというこの心臓は、思わず「MTとの組み合わせで乗ってみたい!」と叫びたくなるほどに活発。最新の燃料噴射技術を用い、GSにも積まれるこの3.5リッター・ユニットは、燃費の点でもライバルを圧倒するポテンシャルの持ち主と言われている。まずは開業当初の日本のレクサスにおける、ひとつの強力なセールス・ポイントになりそうなアイテムがこの新開発の心臓なのだ。
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