もっとも、改良とは言っても今回のそれは、いわゆる『マイナーチェンジ』というほどの規模のものではない。スバルの表記に従えばそれは『一部改良』という表現になるもの。新しいボディカラーの設定やホイールのセンターキャップ部分の意匠の変更(今度はそこにスバルのマーク“6連星”が刻まれた)といった細かいメニューは挙げられるものの、内外装については基本的に一切の手が付けられていない事が『マイナーチェンジ』を謳わないひとつの理由なのだろう。
そうした中で、今回の『一部改良』の目玉的なニュースはと言えば、それはどうやら3リッター6気筒エンジン搭載のセダン/ワゴンの『3.0RスペックB』グレードに、これまでは存在のしなかった5AT仕様が設定された点。今までは、MT仕様のみの設定で、ユーザーの熱い希望に応えた形となった。ちなみにこの追加モデルも含め3リッターのATモデルには、従来型に対してスロットル開度とトランスミッション変速タイミングの最適化を行った、というアナウンスがなされている。「アクセル操作に対するさらにリニアな加速感を実現させたかった」というのがその理由として挙げられている。
そんな新設定の『3.0RスペックB AT仕様』に、早速ツーリングワゴンのボディで乗ってみた。ATといえども加速は強力。「さすがは3リッターの底力」……と思ったら、ここにはひとつの“かくし味”があった。駆動力を左右するディフレンシャル・ギア比が、既存の『3.0R』グレードのそれよりもローギアード化されていたのである。
実は『3.0R』と『同スペックB』とではシューズのサイズが異なる。前者が17、後者が18インチと、組み合わせるホイールサイズが違うのだ。215/45というタイヤの幅と偏平率のスペックは同一だから、これでは18インチを履く方が外径と周長も大きくなる理屈。すなわち、そのままでは実質的なハイギアード化となり駆動力が低下してしまうところを、ディファレンシャル・ギア比の変更によって“補正”をかけているのが『スペックB』の駆動系というわけだ。
そんな気遣いの甲斐もあってか、6気筒車らしいスムーズさを保ちつつも強力な加速を示すこのモデルは確かにアップシフト時のエンジン回転数低下に伴う駆動力の落ち込み感も以前の『3.0R』よりも小さくなった印象。このあたりが「電子制御スロットルのプログラム変更による効果」という部分なのかも知れない。と同時に心地良いのが、フロント17インチ/リア15インチ・サイズのブレーキシスムが生み出す減速フィール。特に、微妙な踏力変化に応じての効きのコントロール性が優れる点は特筆レベル。要は「思い通りの減速」を実現してくれるのが、このクルマのブレーキと言える。
ハンドリングの自在度の高さは、定評ある従来のMT仕様の『スペックB』と同様の印象。もっとも、「ダンパー減衰力を見直すなど、操縦安定性と乗り心地のさらなる両立を目指してサスペンションにも手を加えた」とは言うものの、路面によってはややドタバタ感が強く現れるシーンもアリ。快適性重視派には、やはり17インチ・シューズを履く『3.0R』の方がオススメとアドバイスをしておきたい。
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