そんな新しい3シリーズクーペの姿を目にして、「意外にもコンサバだな」と感じた人は少なくないかも知れない。ボディカラーによる印象の差も少なくはなさそうだが、特に無彩色系カラーを纏った新しい3シリーズクーペは、確かに幾分“地味”に感じられたりもする。
しかし、セダンよりもカジュアル志向の強いクーペでありながらこうしてフォーマルなシーンにもしっかりと溶け込みそうな新しい3シリーズクーペのルックスにまつわるそんな印象は、前述のようにセダンに用いられたパーツを流用するのではなく、ウインドシールドやドアミラーに至るまでを新作した事による、計算づくの結果がもたらしたものだろう。それでいながら、その全体の佇まいが明らかに「3シリーズの一員」という雰囲気を演じるのも特筆すべき点だ。例えば、ベルトライン後端をキックアップさせた事によるCピラーの造形や前後ライト周りなどのディテール処理が、3シリーズのクーペというアイデンティティをアピールする役割を果たしているに違いない。
もっとも敢えて細かなポイントを挙げてみれば、ドアと後輪との間に開いたやや大きめの距離が、ちょっとばかりの“間延び感”につながっている気がしないでもない。サイドビューで見ると、後輪がCピラーをしっかりと支える位置に置かれているのは、BMW車らしい躍動感を演じる上で重要なポイント。しかし同時に、スポーティなクーペとしてはやはりホイールベースがやや長過ぎるという印象もどこか拭えない。もちろん、そんなロングホイールベースを採用したお陰で、リアシートでの居住性が予想以上にゆったりしているという“効用”も生まれてはいるのだが…。
いずれにしても、ヘッドスペースにもそれなりのゆとりがあるので、後席を緊急用という割り切った2+2的なパッケージングではなく、大人4人が余裕を持って乗れるフル4シーターのデザインが実現されている事は間違いない。トランクスペースも、やはり外観から察するよりは大ボリュームを確保。さすがに後席への乗降性だけはセダンに大きな差を付けられているが、それでも数あるクーペの中では極めて実用性に富んだデザインを与えられたのが新しい3シリーズクーペと言える。
駆動系やシャシーなどには当然セダン譲りのハードウェアを用いるこのクーペだが、そうした中でもこれまでは無かった初アイテムとして注目されるのが、前項でも軽く述べた3リッター直列6気筒でツインターボチャージャー付きの直噴エンジンだ。
BMWのガソリンエンジンとしては久々の“復活”となるターボ付きユニットは、「同出力の8気筒エンジンよりもおよそ70kgも軽量で、同出力のポート噴射式エンジンに比べると10%の燃費向上が果たされている」と、まずはその軽量と低燃費ぶりをアピール。それでいながら、最高出力は300psを軽く超え、0→100km/h加速もMT仕様で5.5秒、AT仕様でも5.7秒という俊足ぶりを誇る。すなわちそれは、0→100km/hが5.2秒という現行のM3に匹敵する絶対加速力の持ち主である事を示してもいるのだ。
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