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エンジンをスタートさせると5リットルの力強い排気と吸気音のパフォーマンスを感じるが、意外とおとなしい。ところが3600回転付近を過ぎると吸気音が急速に高まり、いかにもそれらしいスポーツの世界へ突入する。さらにレッドゾーンに近付くにつれて、メカニカルノートが響き渡り、明らかに2UR−FSEとは素性の違うエンジンであることがわかる。低速トルクも十分だが、それよりもトルクの山があって、高揚感を大切にしているのが嬉しい。また中速回転域でのレスポンスはとても素晴らしい。
マニュアルレンジで走るIS Fはダイレクトにエンジン回転にミートするので、ドライバーがマニュアルでパドルなどを操作しなければならない。回転の上昇の早いエンジンはほっておくとレブリミッターに容赦なく当たる。それに変速のレスポンスが非常に早くて(0,1秒)ショックも伴うが、それがさらにスポーツマインドをくすぐるのだ。マニュアルレンジではDレンジとは違ってアクセルに敏感に反応するので、高速クルージングをしている際にも前のクルマの速度に合わせるのは簡単だ。通常のATでは時としてダイレクトではないので、場面によってはブレーキペダルにアシが行くが、ISFではその必要はない。
さてスポーツVDIMとマニュアルレンジでウェットの冨士SWにISFを乗り入れる。
たちまち、1コーナーに近付き、ダウンシフトとともに強力なブレーキを使う。もちろんABSは作動し、IS Fは身を震わせるようにして減速する。アクセルを踏むとリアは容易に流れるが、ある程度のドリフトアングルをつけたところで、スポーツVDIMが作動して、これ以上のテールスライドを許さない。
さすがにフロント荷重が大きいクルマだけに時としてアンダーステアが顔を出しそうになるが、パワーに任せてリアを振り回すと、クルマの姿勢のコントロールは意外とセオリーどおりなコトがわかる。長いコーナーが続く100Rではさすがに速度を抑えて旋回する。
ちなみVDIMをすべてオフにした時は素早いステアリングワークでカウンターステアを駆使して、長いドリフトコントロールを楽しむことが出来る。もちろん油断は大敵、不用意にアクセルを開けると、あっと言う間にスピンしてしまうから注意したほうが良い。
ヘアピンを通過した後の超高速コーナーでは素早いシフトで次々をシフトアップして速度を乗せていく。Bコーナーの手前では急制動とともに2速までシフトダウンしたが、変速はスムースだ。ここからは上りのトリッキーなコーナーが続くが、トルクフルで8速もあるギアボックスのおかげで、完全にいつでもパワーバンドに乗せていくことが出来る。
ストレートでは速度リミッターのないテスト車に乗る幸運に恵まれたが、ストレートエンドでウェットの中で245キロをマークした。この領域でもISFは非常に安定していた。しかも連続走行でもエンジン、トランスミッションなど冷却系に問題は少しも生じなかった。
ISFはとてもファンタステックなスポーツセダンだ。欲を言えば“もう少しシャシーのトラクションが欲しい”“あと500回転高回転まで回したい”などあるのだが、それらはこのクルマの評価を下げることにはまったくならない。
とにかくISFのステアリングを握る機会があったら、純粋にドライビングを楽しんで欲しい。きっとこのクルマが好きになる。 |
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