アウディ S3 試乗レポート
S3の6速Sトロニックは、まさに快感シフト
アウディA3に搭載されている2.0TFSIエンジンは、アウディとVWの幅広い車種に搭載されており、そもそも相当にデキの良いエンジンとしてすでに定評がある。A3用の標準の2.0TFSIエンジンでも200psのパワーを発生するが、今回のS3用のエンジンはチューンアップによって256psを発生するだけでなく、吹き上がりも一段とスムーズなものになった。ブロックからピストン、コンロッドに至るまで専用のものが用意されているから、回転上限が500回転上がっただけでなく、吹き上がりそのものが格段にスムーズなのだ。
アクセルを踏み込むのに応じて一気に吹き上がり、同時にパワーが盛り上がっていく気持ち良さがあり、古典的なターボ車にあるようなタイムラグなど感じる暇のない一直線の吹き上がりを見せる。この気持ち良さはさすがにS3という印象である。
6速Sトロニックの変速フィールもとても気持ちが良い。発進加速で踏み込むと、1〜2速は7,000回転から始まるレッドゾーンの500回転くらい手前で変速していくが、2〜3速はレッドゾーンの直前まで吹き上がる。その吹き上がりに合わせて加速感がまた気持ち良い。
6速Sトロニックはシフトレバーやパドルを使って積極的なマニュアル操作を楽しむことも可能だし、マニュアル操作をしなくても適切なタイミングで適切なギアを選んでキビキビと変速してくれるので、クルマ任せにしたほうが確実に速い。しかも減速時にはブリッピングを入れて回転を合わせてつなげるような芸当も見せてくれるので、Sトロニックによる走りは一段と楽しいものになった。
試乗車にはオプションのマグネティックライドが装着されていた。磁性体を使ってコンマ以下の秒数でダンパーの特性を変化させるシステムで、すでにTTなどにも採用されているもの。乗り心地に優れたノーマルと、硬めの味付けとなるスポーツとの切り換えをすると、かなりメリハリの効いた乗り味の違いが確認できる。
下側の部分がフラットな形状をしていて乗降性に優れた3本スポークのステアリングホイールは、やや柔らかめながらSモデルらしい手応えを感じさせてシュアでダイレクト感のあるステアリングフィールを示す。これもなかなか好感が持てるものだった。