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質実剛健。
そんな四文字の熟語で表現されることが多いドイツ製自動車メーカーの中にあって、フォルクスワーゲンはひときわ強く「それ」を感じさせるブランドとして広く認知されている。高い信頼性と品質を重視して設計されたフォルクスワーゲンの製品は、生真面目なドイツ職人の仕事を具現化したかのように折り目正しく、また使い込むほど手に馴染むことで多くのユーザーを魅了した。信頼性と品質の高さを何よりの美徳とするドイツ民族の精神が各モデルに色濃く反映されていたため、世界中のマーケットはそれを長年に渡って評価し続けてきたわけだ。
穿った目で見れば実直すぎて面白味に欠ける自動車作りのようでもあるが、常に斬新かつ革新的な技術を導入することで世に送り出されてきた傑作揃いの歴代モデルを見れば、フォルクスワーゲンが真面目一辺倒なメーカーでないことを理解するのは難しくない。ステアリングを握ることで楽しさを感じられることもまた、フォルクスワーゲン車の魅力であるように、決して個性を消し去ることで「質実剛健」を演出しているわけではないのだ。
また、近年はパサートやジェッタなど、より上質で高級感が味わえる新型モデルを登場させるなど、フォルクスワーゲンは新しい価値を持つブランドとしてさらにファンを増やし続けている。
ドイツはニーダーザクセン州のヴォルフスブルクを本拠地とする、フォルクスワーゲンの歴史は、第二次世界大戦前、ドイツ国家から「ドイツ国民のためのクルマ」の開発を依頼されたことに端を発しており、メーカー名である「フォルクスワーゲン(Volkswagen)」という言葉もそこから誕生した。実用的な小型車作りを得意としてきた自動車メーカーとしての存在を、ブランドネームがそのままに物語っているといってもいいだろう。
燃費がよく低価格で、かつ4〜5名の乗員が高速で移動できる実用性など、「国民車」へ課せられた条件に挑んだのは、スポーツカーブランドであるポルシェの生みの親としても知られるフェルディナンド・ポルシェ博士であった。エンジンは前、駆動は後輪が常識とされていた時代に、エンジンを後方へ搭載する斬新なレイアウトでスペース効率を高めるなど、ポルシェ博士の考案した革新的な技術が礎となり、後にフォルクスワーゲンはヒットモデル「タイプ1」を生み出す。「タイプ1」は、流線型の愛らしいボディデザインから「ビートル」の愛称でも親しまれた屈指の名車であり、日本へは1952年に4台が持ち込まれた。本格的な輸入は翌年から開始され、ドイツの「国民車」は瞬く間に日本の自動車文化へと浸透していく。 |
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