今度の新型Cクラスひと目見て、「なかなかにスタイリッシュだナ」と感じる人は少なくないだろう。もちろんぼくもそうした中のひとり。前傾したベルトラインは今度はサイド見切りとなったフロントフード先端までその勢いが続き、それよりもさらに強い前傾角で描かれたドアハンドル下のキャラクターラインも、従来型以上の躍動感をアピールする。薄型異形のヘッドライトも、従来型の“ヒョウタン目玉”よりも遥かに精悍な視線を投げ掛ける。一方で、個人的には“下すぼまり”になってしまったリアコンビネーションランプの造形だけは余り好きになれないのだが・・・。
そんな新型のスポーティな佇まいを強調するのが、これまではSLを代表とするスポーツモデルにのみ採用されてきたデザインキューをモチーフする、『アバンギャルド』に採用のフロントグリル。中央にレイアウトされた大きな“メルセデス・スター”と大胆な3本ルーバーのグリルから成る顔付きは、「Cクラスのそれ」とは思えないほどの圧倒的な押し出し感の強さと迫力で見る人の視線を釘付けにしそうだ。一方、そんなアバンギャルドの顔付きにはちょっと抵抗が残る・・・とそんな人に好まれそうなのが『エレガント』、『クラシック』に採用のより繊細な雰囲気でまとめられたフロントマスク。メルセデスならば、やはりフード先端にマスコットが立っていなければ・・・と考える人にも、より抵抗無く受け入れられそうなのがこちらの顔付きだ。
実際に新型のキャビンに乗り込んでみると、「余り広くはなっていないナ」というのが実は正直な第一印象だった。ショルダーとエルボー(肘)部分では幅を40mmほど拡大、と謳いはするものの、実感としてはそれも従来型からの差をさほど感じない。後席に移ると、フロントシート下への足入れ性に優れるお陰で大人にとっての実用的なスペースは確保をされているものの、特にレッグスペースは従来型同様、「どちらかといえばタイト」と表現する方が当たっている印象だ。すなわち、先に紹介のボディサイズと共に「スペース的には従来型レベルをキープ」という考え方で開発されたのが今度のモデルという感触。それよりも、やはり最大のライバルであるBMW
3シリーズを横目にしつつ、「このクラスでベストな全幅は1.8m以下!」と高らかにアピールするのがこのモデルなのである。
ところで、ライトスイッチや空調のコントロール系など、基本的な操作系は「あるべき物がある所にある」というメルセデス流儀が踏襲された新型Cクラスのインテリア。が、それは決して進化が感じられないという意味ではない。例えば、これまで低い位置にあって見辛かったナビゲーションモニターは、今度は格納式とされてダッシュアッパーの“一等地”へと引越ししているし、“COMANDO”と呼ばれるマルチメディアのジョイスティック式操作システムは、これまではこの種のものでナンバー1、と思えたアウディ“MMI”の出来栄えを凌ぎ、最上級と思われる使い勝手の良さを実現した。ちなみに、すでにMLクラスやSクラスなどに見られるATセレクターをコラムレバー化した“ダイレクト・セレクト”は、ヨーロッパではMT仕様の設定もあるためか新型Cクラスには採用されなかった。日本車からの乗り換え組にとっては、ウインカーレバーとも間違えやすいこのロジックが採用されなかったのは、偶然とは言え日本市場にとっては朗報かも知れない。 |